世界を動かした非常識人列伝 第13話
井深大 （1908年〜1997年）
ソニー創業者の1人
ソニーの創業者の1人である井深大。彼の葬儀の際、物理学者の江崎玲於奈は「井深さんは未来を考え、見ることで、現在を、明日を知る人だった」と述べたと言います。井深大はまさにそんな人だったそうです。つまり、温故知新で未来を知る、というタイプではなく、いつも未来を見つめているタイプ。最晩年に「いま何がしたいか」と聞かれた井深は「小さな会社を作って、またいろいろチャレンジしたいね」と答えたそうです。
そんな井深の挑戦のひとつに、「超能力」の研究がありました。1980年代後半。デジタルオーディオの研究者であった人物から「社内で超能力について研究したい」と提案されます。普通なら、そんな提案を一蹴するところですが、井深は自分が興味を持っていた東洋思想の「気」の研究もするなら、という条件付きでエスパー研究所の設立を認めたのだそうです。
ここではスプーン曲げから千里眼などの研究も行われました。また、超能力があるという子どもに数字を当てさせるという、ESPカードによる能力開発のようなことも行われていたらしいのです。
しかし、これらの取り組みは、いわゆる超常現象を突き止める、というものではなく、それが本当にあるのか、あるとすればどのような原理なのか、という純粋な探究心からくるものだったようです。いまある技術をどうすれば未来に繋げられるのか、という考え方ではなく、誰もが見たことがない新しい発見から、未来を切り拓いていく。井深のそんな考え方が、超能力の研究へと向けられたのは自然な成り行きだったのかもしれません。
しかし、井深大が亡くなった翌年、研究所は閉鎖されました。また、ソニーの公式ホームページには、エスパー研究所の記録は記載されていません。