#17 「理不尽な常識に立ち向かった男」マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第17話

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(1929年〜1968年)
アメリカ公民権運動の指導者

39歳で暗殺されたキング牧師は、アメリカの人種差別に立ち向かった公民権運動の指導者として知られています。彼が初めて差別を体験したのは6歳のとき。隣に住んでいた白人家庭の子と遊んでいると、その母親が「黒人とは遊ばせない」と言ったそうです。

1954年、アラバマ州モンゴメリーで教会で牧師となったキング。ちょうどそのころ、モンゴメリーでローザ・パークスという黒人女性が、バスの運転手から「白人に席を譲るように」と言われ、これを拒否して逮捕されるという事件が起きました。当時、まだあった人種分離法違反の容疑ですが、これをきっかけに黒人による公民権運動に火がつきました。

キング牧師はこの事件に激しく抗議。モンゴメリー・バス・ボイコット事件運動を計画して、抗議運動を牽引しました。バス・ボイコットはアメリカ全土に広がりを見せ、382日間に及ぶ大規模なものとなり、1956年には連邦最高裁判所が違憲の判決を出すにいたりました。

初めて一般市民が参加した公民権運動は、それまで常識とされていた人種差別という理不尽をあぶり出し、キング牧師を公民権運動の有力なリーダーの一人へと押し上げました。しかし、そんなキング牧師も1968年4月4日、白人男性に暗殺されてしまいます。

キング牧師の暗殺後、アメリカ国内の多くの都市では憎しみと怒りから数多くの暴動が起こりました。しかし、そんな暴動の数々も、彼の葬儀が始まると怒りは哀しみへと変わり、黒人だけではなく多くのアメリカ人が涙しながら葬儀に参列したと言われています。

この出来事は、キング牧師が徹底して貫いた非暴力主義が、ある意味で勝利したことを示しているのかもしれません。そして、同時に、これからの世界はこれからの世代の取り組み方にかかっているのだ、というキング牧師の残したメッセージだったのかもしれません。

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