#18 「破天荒で人なつっこい伝説の役者」勝新太郎

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第18話

勝新太郎(1931年〜1997年)              
歌手、映画監督でもあった昭和の大スター

勝新太郎と言えば、『座頭市』シリーズや『悪名』シリーズで大いに人気を博した昭和の大スターです。しかし、同時に豪快でやんちゃな人柄で世間を騒がせ愛された人物でもあります。非常識と言えば、勝新太郎ほど非常識な人はいなかったかもしれません。

あるドラマのなかで、「驚き困っている」という演技を求められたときには、若手俳優が実際に困り驚いている顔を見るのが手っ取り早いだろうと、自分の高級外車の助手席に若手俳優を乗せて撮影所内をあちらこちらに車をぶつけながら走り、文字通り驚き困っている若手俳優の顔を笑いながら眺めていたそうです。

また、有名なエピソードとしては黒澤明監督作品『影武者』降板事件がありますね。撮影所内に、「演技のチェックがしたい」とビデオカメラを持ち込んだ勝新太郎を黒澤監督が許さず、二人が衝突。「現場には映画のカメラ以外の持ち込みは許さない」という黒澤監督と、「それはわかるが、ちょっとチェックしたいだけじゃないか」という勝新太郎。最後には「監督は2人いらない」という黒澤明に、怒り心頭の勝がそのまま降板してしまったという一件です。

どちらにしても、非常識には違いないのですが、勝新太郎なりの演技への研究熱心さがもたらした結果なのかもしれませんね。『影武者』降板事件にしても、実際は「ただメイキング映像が撮りたかっただけ」という噂もあり、勝新太郎の人なつっこい性格でなんとかなると思ったのに、黒澤監督が思ったより怒っちゃった、というのが真相なのかもしれません。

わがままで、おちゃめで、ちょっと自分勝手で芸に熱心。そんな勝新太郎だからこそ生まれた『座頭市』や『悪名』という数々の名画たちがあります。同時に、そんな勝新太郎だからこそ、日の目を見なかった幻の勝新太郎版『影武者』があります。

令和という新しい時代に突入し、ますます昭和は遠くになりにけり。非常識な破天荒から生まれてきた名演が、新しい時代にはどこから生まれてくるのか。そんな令和の楽しみ方もあるのかもしれませんね。

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