世界を動かした非常識人列伝 第19話
三遊亭圓朝(1839年〜1900年)
『牡丹灯籠』『真景累ヶ淵』を生んだ落語家
三遊亭圓朝は江戸時代末期から明治にかけて活躍した落語家です。笑いのない人情噺、怪談噺を得意とする講談に近いスタイルの落語家でした。その巧さは師匠である二代目・三遊亭圓生が嫉妬したほど。圓朝がかけようとしているネタを先に高座にかけて邪魔したといいます。
しかし、それが功を奏することになります。たまりかねた圓朝は、古典ではなく自分で話を作り、それを高座にかけるようになったのです。そうすればいくら師匠と言えども、邪魔はできないだろう、という魂胆です。
そこから生まれてきたのが、現代も語り継がれる名作の数々。怪談噺では『牡丹灯籠』『真景累ヶ淵』『怪談乳房榎』などがあり、人情噺では『芝浜』も圓朝の作だと言われています。どれも、現在でも高座にかけられている作品ばかり。舞台化されたり、映画化されたこともあります。
師匠もうらやむ巧さを持ち、また、師匠の嫌がらせに抗う負けん気を発揮し、さらに新作を作ればその完成度の高さが後々にまで語り継がれる。三遊亭圓朝は自らの危機をチャンスに変える天才だったのかもしれません。
さらに、二葉亭四迷が『浮雲』を書くとき、圓朝の落語の口演筆記を参考にしたという話も残されています。三遊亭圓朝は落語、怪談の世界だけではなく、明治の言文一致運動にも大きな影響を与えた存在として、現代でも高く評価されています。