#20 「世界を怖れず、妻を怖れた奇行の画家」サルバドール・ダリ

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第20話

サルバドール・ダリ(1904年〜1989年)
シュルレアリスムを代表する画家              

ぐにゃっと溶けたような時計が印象的な『記憶の固執』など、数多くの不思議な絵で有名なサルバドール・ダリ。シュルレアリスムの巨匠であるダリは、生前、数々の奇行でも知られていました。

ある時、ダリは講演会に潜水服を着て登場。しかし、重いからと酸素ボンベを外してしまったそうです。そうすると、密閉された潜水服のなかに酸素が供給されず、舞台の上で呼吸困難に陥ってしまいました。しかも、ダリが「助けてくれ」と叫んでも、余興である科のように思われ、なかなか助けてもらえなかったそうです。

またある時は、頭のてっぺんにフランスパンをのせて「リーゼントだ」とうそぶきながら、マスコミの前に登場。唖然とする彼らの表情を楽しみながら自己紹介を始めたそうです。サルバドール・ダリは、絵画だけではなく、存在そのものも作品のような存在だったのかもしれません。

しかし、そんなダリにも一つ弱みがありました。それは妻のガラ。ダリは生前「わたしはガラなしではダリにはなれない」と公言するほどでした。それほど、ガラを愛していたダリは、作品にも「ガラとサルバドール・ダリ」と署名していました。ガラと出会うまでは女性恐怖症だったというダリ。つまり、ガラはダリにとって女神であり、創作意欲の源であったのです。

だからでしょうか。恋多きガラがたくさんの若い恋人たちと付き合っていても、その愛がさめることはありませんでした。また、ダリはガラにお城を買い与えましたが、ガラからの招待状がなければ入ってはいけないというルールを突き付けられても、きちんと守っていたそうです。

そして、ダリはガラが亡くなるまで、ガラの贅沢な暮らしのために大量の絵を描き続けました。しかし、それはいわゆる恐妻家というイメージではなく、天才的な才能を世の中に放出するためにガラと共に巡礼の旅をしていたというイメージなのかもしれません。

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