#33 「莫大な資産に恵まれた寡黙な化学者」ヘンリー・キャヴェンディッシュ

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第33話

ヘンリー・キャヴェンディシュ(1731年〜1810年)
死後、多くの研究成果が評価されたイギリスの化学者・物理学者

イギリスに生まれ、ケンブリッジ大学で学んだヘンリー・キャヴェンディッシュは、化学者・物理学者として大変恵まれていました。なにしろ貴族の家系だったので、遺産などが豊富で資産に恵まれていたからです。キャヴェンディッシュは、豊富な資金を背景に、生涯を研究に捧げました。

大学では物理学と数学で特に優秀な成績を収めていたキャヴェンディッシュですが、なぜか大学を中退してしまい、実家で研究に打ち込むことになります。さらに父親の死後は、研究資料を置くための別邸を複数所有して、そこを図書館として一般にも開放。実験室、工作室として使用した別荘もありました。

このように、恵まれた環境の中で、キャヴェンディッシュは「クローンの法則」「オームの法則」などを研究、しかし、キャヴェンディッシュの研究成果のほとんどは、死後に発表されました。彼の深い知識と高い才能は生前から広く知られていて、ハンフリー・デービーはキャヴェンディッシュの死を「ニュートンの死以来キャヴェンディッシュの死ほどイギリスが大きな損失を被ったことがない」と称えたそうです。

またキャヴェンディッシュの研究は非常に正確で精密であったと知られています。19世紀になると、キャヴェンディッシュの評価は高まり、遺稿や実験結果が出版され、彼の名を冠したキャヴェンディッシュ研究所が設立されています。

寡黙で、誰とも会わずに人生を送りたい、という性格は、ゆとりある貴族の出身だからこそ生まれてきたものなのでしょうか。それとも、奥ゆかしい個性によるものでしょうか。どちらにしても、そんな生き方が人知れず重要な研究へとキャヴェンディッシュを誘ったのではないでしょうか。

最後に、キャヴェンディッシュの臨終の場面をご紹介しましょう。1810年、病床にあったキャヴェンディッシュは召使いを呼びました。そして、こう言ったそうです。「私はもうじき死ぬ。私が死んだら。いいかい、必ず死んでから、ジョージ・キャヴェンディッシュ卿(ヘンリー・キャヴェンディッシュのいとこ)に知らせなさい」と。そして、30分後に再び召使いを呼んで、さっきの内容を復唱させたそうです。さらに30分後、召使いが様子を見に来ると、キャヴェンディッシュはもう息を引き取っていたそうです。

キャヴェンディッシュにふさわしい几帳面な最期だったような気がしますね。

タイトルとURLをコピーしました