#85「無音を音楽にしてしまう現代音楽の巨匠」ジョン・ケージ

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第85話

ジョン・ケージ(1912年〜1992年)
アメリカの現代音楽の作曲家・詩人

ジョン・ケージはアメリカで生まれた音楽家であり詩人であり思想家でした。いわゆる実験音楽と呼ばれる分野で彼は独自の作品を数多く発表し、音楽の定義を広げたという功績を持っています。いまだに、彼の作品はテレビ番組などでも取り上げられます。また、いまこの時間にも演奏が続いている作品もあります。

ジョン・ケージの代表作『4分33秒』は三つの楽章からなる1952年初演の作品。三楽章を合わせて4分33秒なのですが、そのすべての楽章がTACET(休み)となっています。つまり、演奏が始まってから楽譜通りに無音の時間が4分33秒続くのです。実際の演奏風景が動画配信サイトなどにあがっていますが、オーケストラが観客から拍手を受け、チューニングをし、指揮者の合図で休みを4分33秒続ける様は、まるでコントのようです。

しかし、この楽曲は高く評価されています。その理由は何よりも最初に無音を作品にしたからです。そして、徹底的にそれを研ぎ澄ましたことで、その後同じようなアイデアで誰かが作品を作ることを許さないほどの完成度を持ったことが評価の理由なのだと思います。

他にも、現在、ドイツの教会で演奏されている『オルガン2/ASLSP』は639年間演奏されることが決まっています。なぜ、こんなに長い間演奏するのか。これはケージの書いた楽譜に「できるだけゆっくり」と書かれていることが原因です。初演では1時間程度の演奏だったのですがケージの死後5年がたって開かれたオルガンシンポジウムで「このゆっくりというのは、本来どのくらいゆっくりなのだろう」という議論がオルガン演奏家、音楽研究者、オルガン技術者、哲学者、神学者たちの間でなされ「理論上は永久に演奏できる」という結論に達しました。そして、この曲を演奏るプロジェクトが開始され、2000年から639年かけて演奏されているのです。

ジョン・ケージの死後30年近く経っても、まだまだ私たちを迷わせ楽しませる彼の作品群。これこそがまさに音楽の裾野を広げ続けたジョン・ケージの功績と言えるのかもしれません。

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