#90「日本全国を測量し日本の姿を教えてくれた男」伊能忠敬

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第90話

伊能忠敬(1745年〜1818年)
江戸時代の天文学者・地理学者

日本が本当の意味で近代国家となったのは、もしかしたら伊能忠敬のおかげかもしれません。江戸時代、忠敬は日本中を測量してまわり、日本の正確な姿を広く人々に知らせることに成功しました。自分たちが住んでいる国の大きさや形も知らずに諸外国と渡り合うことはできません。そういう意味で、伊能忠敬こそが近代日本の立役者だという人もいるのです。

伊能忠敬と言えば、初めて実測による日本全図をつくった人として知られています。では、この偉業をなし遂げたとき、忠敬は何歳だったのでしょうか。測量を開始したのが56歳で、すべての測量を終えたのが72歳でした。今とは違い、人生50年と言われた時代です。忠敬は50歳で隠居し、家督を長男に譲ってから江戸に出て暦学、天文学を学んだと言われています。

隠居してからの手慰みで地図づくりに入ったようにも見えますが、性格が至って厳粛だった忠敬は、測量にも真っ正面から真摯に向き合いました。測量中の日記は51冊にも及び、後に『測量日記』としてまとめられているほどです。実際、測量では地球1周分の距離を歩き続けたと言われ、その並々ならぬ好奇心と情熱は並大抵ではありません。

真面目で情熱的な伊能忠敬がいたからこそ、私たちは自分の住む土地をしっかりと認識できるようになったのです。現在では衛星写真ですぐに確認できることかもしれませんが、逆に衛星も何もない時代に、国土の測量に当たることができる力強さと信じる力、そして想像力が伊能忠敬にはあったのです。だからこそ、彼はいまだに多くの人々のリスペクトを集めているのだと思います。

タイトルとURLをコピーしました