#94「大胆不敵な幼子のような映画監督」スティーブン・スピルバーグ

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第94話

スティーブン・スピルバーグ(1946年〜)
米国の映画監督

1970年代から活躍する映画監督・スティーブン・スピルバーグは映画をいわゆるエンターテインメントに引き戻した監督として知られています。当時、ハリウッド映画は古き良きスターシステムからフランスヌーベル・ヴァーグの影響を受けたアメリカンニューシネマの時代に突入していました。泥沼化するベトナム戦争などの背景もあり人生の理不尽さを淡々と描く映画が若者に指示されていたのです。

そんな中、まだ無名だったスピルバーグはひょいと片手を上げて、常連のスタッフのふりをして撮影所に忍び込んだと言われています。そして、どんな雑用もいとわず撮影所の人たちと仲良くなり、テレビドラマのシナリオから監督へと道を切りひらいたのです。最初に大きく注目されたのは『激突!』というテレビ映画。ただただ大型トレーラーに主人公が追いかけられるという作品はどこかアメリカンニューシネマの理不尽さも感じさせることで、幅広いファンから支持されました。そして、それをさらにパワーアップさせて制作されたのが『ジョーズ』でした。一匹のサメが人を襲うことで街をパニックに陥れる。そんなシンプルな物語が、映画が一級のエンターテインメントであったことを人々に思い出させたのです。

その後も、スピルバーグは『未知との遭遇』『E.T.』『レイダース/失われた聖櫃』『ジュラシックパーク』などヒット作を連発。空前のヒットメーカーとしてアメリカ映画界の第一人者となったのでした。スピルバーグがハリウッドのトップに立った理由は、おそらく彼に誰にも負けない映画への愛情があったからだと思います。しかし、それ以上にスピルバーグを今なおヒットメーカーたらしめているのは、子どものような映画ファンとしてのスピルバーグが彼の中に存在するからではないでしょうか。だからこそ、彼のフィルモグラフィは純粋に映画的な驚きに満ちた作品群で彩られているのでしょう。

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