#107「サスペンス映画の神様は希代の怖がり」アルフレッド・ヒッチコック

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第107話

アルフレッド・ヒッチコック(1899年〜1980年)
イギリス生まれの映画監督・映画プロデューサー

『サイコ』『めまい』『鳥』『ダイアルMを廻せ!』とタイトルを上げていくと切りがないほど、数多くのサスペンス映画を撮り続けたアルフレッド・ヒッチコック。このイギリス生まれのでっぷり太った映画監督、実は予期せぬ出来事が大嫌いだったそうです。毎日、規則正しい生活をし、スケジュール通りに作品を仕上げていく。つまり、ヒッチコックは誰もが驚くような予期せぬ映画を、用意周到にロジカルに作り上げていく監督だったのです。

しかし、そんな彼も映画の完成度をあげるためには、驚くべき行動を見せます。例えば、『鳥』という映画のなかで、主演のティッピ・ヘドレンに対して彼女が心身ともに追い詰められるほどに鳥に襲われるシーンを繰り返させたり、『めまい』のなかで「きれいに見える」という理由で身体が痛くなるほどの体勢での抱擁シーンを強いてみたり。規則正しくロジカルな反面、映画を完成させることへの執着においては、かなりの強さを見せていたようです。

生前、テレビ番組のインタビューに対して、ヒッチコックはこんなことを言っていました。「ドラマとは、退屈な部分がカットされた人生である」と。つまり、彼は自分自身の作品の筋書きの中から退屈な部分をできる限り削除し、面白いと思うサスペンスや恐怖をどんどん加えていったのではないでしょうか。だからこそ、彼の作品はフランス・ヌーベル・ヴァーグの監督であるトリュフォーやゴダールからも高く評価され尊敬されていたのです。

自分自身が楽しめる作品を撮るためには努力を惜しまなかったヒッチコック。そういえば、冷蔵庫に作り物の人間の頭を入れて、妻のアルマを驚かせようとしたことがあったそうです。しかし、ヒッチコックよりもよほど肝の据わったアルマは、さほど驚きませんでした。そんな奥さんがいたからこそ、ヒッチコックはまるで子どもがオモチャで遊ぶように、自由に映画を作り続けられたのかもしれませんね。

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