#109「人工知能の父として甦った男」アラン・チューリング

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第109話

アラン・チューリング(1912年〜1954年)
イギリスの数学者・暗号学者

アラン・チューリングが活躍したのは20世紀の始め。第2次世界大戦の最中でした。チューリングはドイツの暗号機『エニグマ』の解読を果たしたのです。これによりドイツの潜水艦Uボートの攻撃地が予測できるようになり、数万人の命が救われたと言われています。しかし、チューリングの多大なる貢献は、国家機密として扱われていたため、彼の名が世界的に注目されることはありませんでした。そればかりか、仕事はまったく関係のない同性愛者であるということで逮捕収監され、その2年後に自ら命を絶ってしまったのです。まだ41歳という若さでした。

イギリス政府がアラン・チューリングの名誉を回復したのは2009年のこと。ジョン・グラハム=カミングがイギリス政府に対して、チューリングを同性愛で告発したことを謝罪するよう署名活動を開始したことがきっかけでした。当時のイギリス首相、ゴードン・ブラウンは正式に謝罪を表明しました。「イギリス政府とアランのおかげで自由に生活している全ての人々を代表して『すまない、あなたは賞賛に値する』と言えることを非常に誇りに思う」という声明によって、アランの死後、少しずつ高まりつつあった戦時中の功績に大きく注目が集まりました。

その後、2013年にはエリザベス女王の名の下に恩赦を発効。キャメロン首相もその業績を称えました。同時期に人気俳優が主演して映画化もされ、チューリングの仕事が現在の人工知能開発にもつながるほどの高度なものであったことが知られるところとなったのです。

2021年にはチューリングの肖像を絵柄にした紙幣が発行されることも決定しました。自分自身の大好きだった数学的な謎解きを押し進め、多くの人々の命を救ったアラン・チューリング。彼は今の自分への評価をどのように思っているのでしょうか。もしかしたら、ドイツの暗号を淡々と解き続けた時のように、なぜこうなったのか、と天国でその謎を解こうとしているのかもしれませんね。

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