#111「音楽のルーツを探し求めるギタリスト」ライ・クーダー

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第111話

ライ・クーダー(1947年〜)
アメリカのギタリスト

ライクーダーはスライドギターの名手として、また映画音楽のコンポーザーとしてその名を知られています。しかし、ライが高く評価されている理由は、素晴らしい楽曲をつくり、ギターを弾き、歌を歌うからだけではありません。彼は世界各国の音楽のルーツを発掘して再発見し、そこから新たな楽曲を生み出し続けているのです。

アメリカのブルースやカントリー、日本の琉球音楽など、多種多様な音楽を自分のものにするセンスには目を見張るものがあります。では、ライはどのように世界中の音楽を発掘していくのか。世界中からレコードやCDを集めて聞く、というだけではなく、彼はその音楽の中に飛び込むのです。例えば、ハワイアンミュージックに興味をもったライは、ハワイアンミュージックの大御所に連絡を取ると、ハワイに長期滞在し、毎日彼のスタジオに足を運ぶそうです。そして、質問をするでもなく、ギターの弾き方のレクチャーを受けるでもなく、じっとスタジオの片隅で耳を傾けているそうです。毎日毎日スタジオに通い、じっと音楽を聞き続け、ひと月、ふた月経ったある日突然、「私の音を聴いて欲しい」と言うと、いきなり完璧にハワイアンミュージックを奏でるのだといいます。

音楽への探究心と自己鍛錬。すべてのレベルが高いからこそ、ライ・クーダーの音楽はただ人気があるのではなく、世界中のミュージシャンからリスペクトを集めているのだと思います。しかし、そんな彼の人生は順風満帆なものではありませんでした。

「他の人たちがどうやってレコードを売ろうかと考えているとき、僕はどうやったらうまいプレイヤーになるかしか考えていなかったんだよ」というライ。レコードをコンスタントに発売していたものの、世界中の音楽を旅する彼は生活に窮していました。家族もいるのにクレジットカードや電気などのライフラインもとめられる始末。彼がやっと食べられるようになったのは映画音楽という道が拓けたからでした。『ロング・ライダーズ』『パリ、テキサス』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などなど、多くのサウンドトラックでの成功、そして、好調なアルバムセールスは、彼の非常識なまでの真摯な取り組みがあったからこそなんですね。

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