#116「犯人の盛り土に触れ泣き崩れた昭和の名刑事」平塚八兵衛

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第116話

平塚八兵衛(1913年〜1979年)
20世紀を代表する多くの事件に携わった刑事

平塚八兵衛は茨城県出身の刑事です。彼が警察官になろうとしたきっかけは、若い頃の誤認逮捕にありました。中学卒業後、農業に従事していたのですがある事件で誤認逮捕され、警察署で取調中に殴る蹴るの暴行を加えられたのです。彼は怒り、発憤して、警察官になろうと決意。上京して警視庁に入庁しました。

平塚は子どもの頃から頭のいいガキ大将でした。子ども同士の喧嘩だけではなく大人同士の喧嘩も話し合いで解決するような話術に長けた、正義感の強い性格であったようです。つまり、彼が昭和を代表する数々の事件を解決に導くことができたのは、人を大切にする気持ちが強かったからなのでしょう。平塚は警視庁で実績を上げ、捜査一課へと異動。1975年に退職するまで第一線の刑事として活躍しました。

平塚が手がけた事件は殺人事件だけでも124件。特に高名な事件として、吉展ちゃん誘拐殺人事件や三億円強奪事件があります。平塚の捜査手法については現代では禁止されている厳しい聴取などがあったとされていますが、「落としの八兵衛」「喧嘩八兵衛」「鬼の八兵衛」と呼ばれていた平塚が数々の実績を上げていたことも確か。「刑事の勘」を研ぎ澄まし、そこから犯人を追い込んでいくという手法自体はこれからの時代には通用しないものになりつつあるのかもしれません。そういう意味でも、平塚八兵衛は昭和が生んだ最後の名刑事なのでしょう。

退職後の平塚は自らが逮捕し死刑になった犯人達の墓参りをしていました。そんな中、吉展ちゃん誘拐殺人事件の犯人であった小原保の墓参りに行ったときのこと。先祖代々の小原家の墓に入れてもらえず、墓石の横に小さな盛り土だけで小原保が葬られていることを知らされます。平塚は愕然とし、その盛り土に触れたあと泣き崩れたそうです。

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