#120「SFからギャグ、歴史までを網羅した漫画の王様」石ノ森章太郎

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第120話

石ノ森章太郎(1938年〜1998年)
ギネスに掲載された多作な漫画家

漫画家、石ノ森章太郎の特長はなんと言ってもそのジャンルの広さと多作ぶり。『サイボーグ009』『人造人間キカイダー』に代表されるSF、『佐武と市捕物控』などの時代劇、『さるとびエッちゃん』などのギャグものの他に、『マンガ日本の歴史』や『マンガ日本経済』などの教育ものも手がけました。また、『仮面ライダー』などの特撮作品の原作者でもありました。

生涯にわたって描きあげた作品は770タイトルに及び、2008年にはギネスから「1人の著者によって出版された最多コミックの記録」として世界記録認定を受けました。しかも、石ノ森は60歳という若さで亡くなっていますから、彼がいかに命を削って多くの作品を後世に残したかがおわかり頂けると思います。

石ノ森のアシスタントも務めた永井豪(「キューティーハニー」「デビルマン」など)は、「お前はまともじゃないから成功する」と言われたそうです。趣味でマンガをやりたいと思っていた永井は、石ノ森を手伝ううちに漫画家としての自覚が芽生えたと言います。彼の目の前には毎日毎日20時間以上もマンガを描き続ける石ノ森がいて、原稿用紙に珠玉の作品が生み出されていくのです。

その時に永井が感じたのは、石ノ森がマンガの世界にアートを持ち込んでいる、ということだったそうです。そして、誰もやらなかったコマ割りで、画期的な表現を行い、同時に少ない時間で枚数を稼ぐ。短時間に数多くの作品を生み出してきたからこそ身につけた石ノ森だからこそ、いま見ても驚くほどの作品群を描くことができたのでしょう。

そして、そんな石ノ森作品にもっとも刺激を受けたのは師匠であった手塚治虫でした。このコラムの第6回でも紹介しましたが、手塚は石ノ森に嫉妬することで、自身の火の鳥にもこれまでになかった表現を持ち込みました。天才が天才を刺激し、互いに高みに登っていく。そんな怖いくらいのライバル関係があったのです。

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