世界を動かした非常識人列伝 第122話
チャック・ベリー（1926年〜2017年）
アメリカのシンガーソングライター
チャック・ベリーはロックンロールの創始者と呼ばれています。ジョン・レノンはかつて「ロックンロールに別名があるとすれば、チャック・ベリーだ」と言ったそうです。ジョン・レノンと同じように、チャック・ベリーの影響を受けたミュージシャンはたくさんいます。しかし、仮に「影響なんて受けていない」と言ったところで、ギターを弾くときにギター・リフを使えば、それはもうチャック・ベリーの恩恵を受けていることになるのです。なにしろ、ギター・リフを生み出したのは『ジョニー・B・グッド』『ロール・オーバー・ベートーヴェン』など多数の曲をヒットさせたチャック・ベリーその人なのですから。
チャック・ベリーは1926年にカリフォルニア州で生まれました。当時のカリフォルニアは不況のまっただ中。貧しい家庭で育った彼は、17歳で自動車の窃盗犯として逮捕されてしまいます。その後、ミュージシャンとしてデビューしますが、ヒット曲を飛ばし、次々とレコードを発売しながらも、時々悪い事をしては監獄に入るということを繰り返しました。
デビューからの10年間で彼が発売したシングルは30枚以上。1960年代の後半からはチャック・ベリーを尊敬する若手アーティストと共演を果たすなどして、人気が再燃。1986年には『ロックの殿堂』入りを果たしています。彼がここまで長きにわたって人気を博した理由は何でしょうか。それはおそらく彼の正直さに原因があるのかもしれません。
生前、チャック・ベリーは、あなたが生み出した演奏スタイルについて聞かせてください、と質問され、こう答えました。「俺はブルースがやりたかったんだ。でも、俺にはマディ・ウォーターズのような辛い経験がなかったんだな。うちの家のテーブルには食べ物がたくさん並んでいたし、人もたくさんいて、楽しい毎日だったんだ」と。その上で、「車の曲を書くのは車が好きだったからだし、愛についての曲を書いたのはみんなが愛を求めていたからだよ」と付け加えたそうです。こんなにも正直な言葉を発する人だからこそ、チャック・ベリーの曲はどこまでも明るく人々に届き、ロックンロールというジャンルを切り拓くことが出来たのではないでしょうか。
