#141「妖怪を愛し、妖怪を守ろうとした男」柳田国男

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第141話

柳田国男(1875年〜1962年)
日本の民俗学者

柳田国男は日本の民俗学者として、生涯をかけて「日本人とは何か」という問いと向かい合い、答を探し求め続けました。日本各地に調査旅行に出かけ、『遠野物語』など多数の著書をあらわし、日本民俗学の開拓者と言われています。

柳田は日本各地の伝説や昔話を熱心に収集し、そこから日本人のルーツや日本人の思考回路を探求しました。その中で重要な役割を担っていたのが妖怪。日本各地にのこされている妖怪伝説は、その地域に住む人たちへの警鐘であったり、特徴をデフォルメしたものだったりします。つまり、柳田が追い求めていた「日本人とは何か」という資質が最も表れやすいものだった言えるでしょう。

だからでしょうか。柳田は妖怪の印象が固定されることを嫌いました。昔の人々は、「小豆を洗うような音がする」という現象から、もしかしたら、小豆を洗う妖怪がいるのではないか、と想像したはず。つまり、大切なのは現象であり、そこから様々な妖怪をイメージするのは人それぞれの自由なのだというわけです。そのため、かっぱを題材に小説を書いた芥川龍之介のことを「かっぱを馬鹿にしてござる」と非難しました。

柳田国男にとって妖怪は、農村地域の信仰を研究するためにとても重要なものでした。だからこそ、面白おかしく作り上げられた妖怪の造形よりも、「音がする」「匂いがする」「声が聞こえる」などの現象を丹念に拾い集め、研究を続けたのです。

柳田国男の著書は彼の死後、半世紀以上が経った今でも重版を重ね、次の世代の研究者たちの大切な指標となっています。

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