#165「自由に生き自由に苦悩した作家」シモーヌ・ボーヴォワール

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第165話

シモーヌ・ボーヴォワール(1908年〜1986年)
フランスの哲学者・作家

ボーヴォワールはフェミニストとして知られるフランスの哲学者にして作家です。『第二の性』は女性解放の思想を広く知らしめた著作として評価され、自伝小説『レ・マンダラン』も多くの読者を獲得しました。

しかし、ボーヴォワールが知名度を上げたのは、フェミニズム運動とサルトルとの交際だったのかもしれません。ボーヴォワールは大学の在学中にサルトルに出会いました。そして二人は実存主義を貫き、自由意志による個人も選択を重視する関係を構築。結婚も子どもを持つことも拒否し、また互いの性的な自由も認めながら生涯をともに生きたのです。

サルトルとボーヴォワールの関係について、ボーヴォワールは「私たちの愛は必然なの。でも、偶然の愛を知ってもいいのよ」と語り、新しい男女の関係として当時の若い世代を魅了して止まなかったのです。しかし、この自由な関係はボーヴォワールを苦しめることにもなりました。

1935年には、ボーヴォワールが自宅に住まわせ面倒を見ていたオルガという女性に、サルトルが好意を寄せ三人は三角関係となります。この三角関係はボーヴォワールに嫉妬という強い感情を抱かせるのですが逆に自由な関係についての思考を深めることにもなりました。結果、ボーヴォワールは『招かれた女』という処女作を書くきっかけになったと言われています。 その後もボーヴォワールとサルトルは、サルトルの死が二人を分かつまで共に過ごしながら、互いも自由を尊重する暮らしを続けました。そして、一見非常識にも見える二人の関係がフェミニズムの新しい時代を切り拓き、同時に男女関係の深い考察にもつながっていったのです。

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