#170「火星人襲来を信じ込ませた映画監督」オーソン・ウェルズ

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第170話

オーソン・ウェルズ(1915年〜1985年)
アメリカの映画監督

映画『第三の男』や『市民ケーン』で有名なオーソン・ウェルズ。彼は映画監督だけではなく俳優としても脚本家としても高く評価されています。しかし、彼の映画監督としての人生はずっと順風満帆なものではありませんでした。その理由は映画に対する想い入れの強さと完成度を求めるこだわりでした。

アイデアマンでもある彼は、数多くの企画や脚本を生み出し続けました。しかし、適当なところで妥協できるタイプではなかったので、いつも制作費がかさみ、未完成に終わった作品やそもそも制作に入れなかった作品がたくさんあります。人生の後半は、その製作費を稼ぐために奔走した日々だったと言えるかもしれません。

オーソン・ウェルズはサービス精神たっぷりな男でした。人を驚かせたい、人を喜ばせたい、人を楽しませたい。いつもそんなことを考えていたのです。時にはちょっとやり過ぎたエピソードも。

彼がまだ20代の頃、ラジオ番組を担当するチャンスに恵まれました。でも、リスナーの反応は今ひとつ。そこで、ウェルズはSF小説『宇宙戦争』をテーマに放送した時にひと工夫することにしました。舞台を現代のアメリカに変え、火星人がやってきた!という内容を臨時ニュースとして伝えたのです。すると、このニュースを聞いたリスナーたちが真実だと思い込んでパニックになったという伝説が残っています。

いろんな研究の結果、火星人襲来のニュースでパニックになったという人はそれほどいなかったのではないか、という人もいます。そのあたり、真偽のほどはわからないのですが、この番組がきっかけでオーソン・ウェルズが世の中に注目されたのは事実です。その後も、彼は様々なアイデアをラジオで実験し、それが映画の道へとつながります。1941年に制作された映画『市民ケーン』では、監督と主演を努めました。そして、このデビュー作が彼の代表作となったのです。

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