#177「愛を求めてフランケンシュタインを書き上げた女性」メアリー・シェリー

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第177話

メアリー・シェリー(1797年〜1851年)
イギリスの小説家

死者を甦らせ怪物を生み出してしまう物語『フランケンシュタイン』。この小説は1818年に出版され、科学的に命を生み出した世界で初めてのSF小説と考えられています。この物語を書き上げたのは実はイギリスの女性なのです。その人の名はメアリー・シェリー。なぜ、彼女はこのような小説を書くことになったのか。そこにはメアリーの困難な人生が大きく関係していたのです。

メアリーは1797年、ロンドンで生まれました。しかし、母はメアリーを産んですぐに亡くなってしまいました。幼かったメアリーは、寂しさに耐えられず、たびたび母が眠っている墓地を訪ねていたそうです。そこで、墓石に刻まれた文字を指でなぞり、彼女はそこで文字を覚えたそうです。さらに不幸なことに、メアリーは父の再婚相手にも馴染めず、スコットランドに送られてしまいます。まだまだ荒涼としていたスコットランドの大地の中で、メアリーはいつも空想にふけっている少女でした。メアリー自身も「人知られずにイマジネーションが生み出す人物たちと会話することができる、楽しい世界でした」とスコットランド時代を振り返っています。

その後、16歳で当時21歳だった詩人のパーシー・シェリーと知り合いました。メアリーの母の墓地でデートを重ねたという二人。既婚者だったパーシーとシェリーは駆け落ちして一緒になりました。そして、メアリー18歳の夏、詩人のバイロンと一緒にスイスの湖畔で避暑を楽しんでいるときに、運命を決定付ける言葉をバイロンが発しました。「ねえ、せっかく夏の湖畔にいるんだから、怪談話をそれぞれ作ろうよ」と。このバイロンからの宿題に答えた物語が『フランケンシュタイン』だったのです。

自分自身が見た怖い夢と、母を慕う気持ちから育まれた愛と優しさを根底に讃えた物語の中で、メアリーは怪物に「生命の苦悩の積み重ねに過ぎぬとしても、おれには尊い」と。いつの間にか、世の中からはメアリーの名は忘れられましたが、フランケンシュタインの名前はSFの起源として、また誰の心をも震わせる根源的な物語として、いまも小説に映画にと語り継がれているのです。

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