#269「ライオンを育てたオーストラリアの女性」ジョイ・アダムソン

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝269話

ジョイ・アダムソン(1910〜1980)
ノンフィクション作家

オーストリアに生まれたジョイ・アダムソンは、1935年から1944年の間に3回の結婚を経験しています。そして、その3回の結婚が、彼女を少しずつ後の偉業へと近づけていきます。最初に結婚した夫がユダヤ人だったため、彼女はナチスドイツの迫害から逃れるためにケニアへ行くことになります。そして、そこで植物学者と出会い2度目の結婚。この時の夫は植物画を描く人で、彼女にも動植物の絵を描くように勧めたそうです。そのおかげで動物画が得意になったジョイですが、結婚生活は続かず、1944年に3度目の結婚をします。3人目の夫が野生生物管理官だったジョージ・アダムソンでした。

1956年、ジョージはケニアの北部で撃たれて死んだメスライオンを発見。同時に、残された三匹の子供のライオンを見つけたのです。その中の一匹がのちに書籍になったエルザでした。ジョイはエルザを献身的に育て、その記録を『野生のエルザ(Bone Free)』として刊行。世界的な大ベストセラーとなったのです。『野生のエルザ』はのちに映画化され、そのヒットを受けてテレビドラマのシリーズも作られました。こうして、ジョイ・アダムソンはのフィクション作家として、ナチュラリストとして世界中に人々から認められる存在になりました。

ジョイはエルザの死後、チータやヒョウの子供も育て、これらの経験も作品化して、そのままキャリアを重ねるのかと思われましたが、彼女の人生は1980年に突然終わりました。ケニア・ナイロビ郊外の国立保護区の中で、ジョイの遺体が発見されたのです。最初はライオンに襲われたことによる事故死だと見られていましたが、のちに羊飼いの青年による強盗殺人ではないかと捜査が二転三転。現在も進行状況が不明となっているそうです。

ジョイはこんな言葉を遺しています。「野生動物は人間が作ることのできないもの。一度なくなれば永遠になくなる。人間はピラミッドは再建できても、生態やキリンを再建することはできないのです」と。その言葉通り、自然を見つめ、自然を生かし、そして、自然の中で亡くなったジョイ。自然のおかげで成功を手にいれ、人に翻弄された人生だったのかもしれませんね。

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