#276「三度も破門になった天才絵師 」長沢芦雪

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝276話

長沢芦雪(1754〜1799)
江戸時代の絵師

長沢芦雪(ろせつ)は兵庫県の丹波篠山に武士の子として生まれました。絵の才能に恵まれていた芦雪は、すでに売れっ子絵師であった円山応挙に師事して、絵を学びました。応挙の弟子は多数いましたが、武士の出身という芦雪は少し毛色の変わった存在だったに違いありません。

芦雪は人を驚かすことが大好きでした。大胆な構図で描かれた無量寺(和歌山)の虎図などは、今にも飛びかかってきそうな迫力で、いまも人気を集めています。しかし、芦雪が人を驚かすのは絵の構図だけではありませんでした。彼は日々の暮らしの中でも人を驚かし楽しんでいたのです。

奇想の画家と呼ばれた天才絵師・長沢芦雪ですが、彼は三度も応挙から破門されています。一度目の破門は応挙へのいたずらが原因でした。ある日、応挙は自ら描いた絵の手本を芦雪に渡しました。この絵手本を元に絵を書いてみろと言ったのです。言わば、芦雪の実力をはかるテストのようなもの。何日かして、芦雪は応挙に絵を提出したのですが、いたずら好きな芦雪のこと、実は応挙からもらった絵手本をそのまま提出したのです。

しかし、応挙もまさまか自分が描いた絵手本をそのまま持ってくるとは思ってもいません。芦雪が描いたものだと思い込んだ応挙は、自分の絵手本に直しを入れ、再び直してくるように芦雪に渡しました。芦雪は言われたとおりに直して、再提出。無事に合格ももらったのですが、後日、このことに気付いた応挙は激怒。芦雪を破門してしまいました。

これに懲りたのかと思いきや、芦雪はその後も同じ事を繰り返して、三度も破門になったそうです。師匠の応挙も同じようにだまされるなんて、師匠も弟子も、天才という存在は少し変わっているのかもしれませんね。

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