真空にヒントあり#10 「安心して病院で治療が受けられるのも真空のおかげ?」

真空にヒントあり
第10話「安心して病院で治療を受けられるのも真空のおかげ?」

もしかしたら、気付きにくいかもしれませんが、今度、病院の近くを通る機会があれば、ぜひ、建物を注意深く眺めてみてください。ガスタンクを見かけることがあるはずです。

このガスタンク、病院だけではなく企業の研究所や理系大学などでもよく見かけるもので、液化酸素、液化窒素などが貯蔵されています。液化酸素は、病院の酸素源、ロケットの酸化剤などに利用され、液化窒素は、病院の血液や検体の凍結保存、MRI装置の冷却、生殖細胞の冷却、皮膚の凍結治療に利用されています。また、企業の研究所では電子顕微鏡や各種真空機器の冷却に利用されており、その他食品や製鉄、半導体などの製造工場でも使われています。

これらの液化ガスは極めて低温。どのくらい低温なのかというと、酸素ガスの液化温度(沸点)は-183℃です。そのため、保存や取り扱いに注意が必要になるのです。

そんな液化ガスを保存するために、優れた断熱性能を保持しなければなりませんので、魔法瓶のような二重構造になっています。外側タンクと内側タンクの間は真空状態になっていて、パーライト(火山岩などの多孔質の断熱材)の粉末が充填されていることにより、きわめて熱が伝わりにくくなっているのです。

今度、病院に行ってこれらのタンクを見かけたら、このタンクがあるから様々な医療活動が出来るんだなあと思い出してください。そして、そんなタンクを真空の技術が支えているんだなあと、これまた真空についても思いをはせてみてください。

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