#62 「金や銀に輝く糸は名人芸から真空芸へ。」

真空にヒントあり

着物の帯や、履き物の花緒など、いろんなところで多用されている金色や銀色、ラメ色に輝く糸を金銀糸と呼びます。もともと、こうしたきれいな糸は、職人の手で作られていました。和紙に漆を塗り、そこに金箔を張り付けて糸状にしたものを芯糸に巻き付けていきます。みなさんが、博物館で見かけるような織物の金銀糸は、まさに職人による名人芸なのです。

しかし、そんな伝統工芸の世界に革新がもたらされたのは昭和30年代。真空技術によって金銀糸の大量生産が容易になったのです。12μm程度のマイラーやポリエステルなどのフィルムの面に、真空中で蒸発させたアルミニウムを蒸着させていくという製法。この方法だと、毎分300mという驚異的な速さで金銀糸の素材が出来上がります。アルミ蒸着のままだと銀糸になり、黄金色に着色すると金糸用フィルムになります。これを裁断して糸にすることで、安価に大量に金銀糸が世の中に出回るようになりました。

こんなふうに真空技術は様々な産業分野で取り入れられています。伝統的な技術によって作られる芸術的な工芸品と、そんな美しいものを手軽に多くの人に楽しんでもらうための真空技術。両方が支え合って、人々に愛される製品を送り出していければいいですね。

62 「金や銀に輝く糸は名人芸から真空芸へ。」

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