#88「紙の未来を夢想しながら、紙と真空の関係を考える」

真空にヒントあり

朝、会社へ行くときにネクタイを締めながら家を出て、カバンに突っ込んだ新聞を電車の中で読む。そんな光景はほとんど見られなくなりました。新聞を定期購読している家庭はいまや6割と少し。若者を中心に新聞記事はスマホで見るだけという人も増えました。しかし、人の歴史は紙と共にありました。紙は私たちの生活に深く根を下ろし、そう簡単になくなるものではない、というのも事実です。

さて、紙の原料はパルプ。パルプは木材を細かく粉砕し、薬品処理をして作ります。そして、パルプの繊維をさらに細かく叩いてから、数種類の繊維、白土、滑石、炭酸カルシウムなどを混ぜた水溶液に入れ、これを紙すき機にかけるのです。

紙をすく機械は長いもので250メートルにもなります。どろどろのパルプが金網ベルトに乗って進んでいく途中で、水分が金網の下に落ちます。でも、自然に落ちるだけでは充分には脱水出来ません。そこで、登場するのが真空ポンプ。真空ポンプを使って金網の下から吸引し、脱水を促進させるのです。その後の工程では、ローラーに挟んだり、ホットローラーでプレスするなどして、合計数百というローラーの上を通過しながら乾燥して紙が完成します。

ほんの少し前までは、新聞や本もあっと言う間に電子書籍に取って代わるのではないか、と言われていました。しかし、いまの状況を見ていると、紙でなければならないもの、電子書籍が最適なもの、という具合に適材適所で棲み分けされていくようです。ということは紙と真空の関係は、意外にこれからも続いていくのかもしれませんね。

88「紙の未来を夢想しながら、紙と真空の関係を考える」
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