#91「真空技術で作られる塩は日本の英知の集結」

真空にヒントあり

塩がなくては私たちは生きてはいけません。人間だけではなく、塩分なくして生きることができる動物はいないのです。それほど重要なものだからこそ、塩づくりは様々な国で国家事業として大切に継承されてきました。日本でも長らく専売公社だけが塩を扱い、安定した品質・価格の塩を国民に提供してきたのです。

もともと、日本の塩づくりは海水を広大な塩田で乾かし塩を取るという方法が主流でした。しかし、塩を含んだ砂を運び、釜で炊き上げながら作る塩づくりは効率の悪い重労働でした。そこで1927年に登場したのが真空式蒸発缶を使用した製造方法。昔ながらの製塩技術を根本から変える画期的な省エネ型の製法でした。

海水を真空状態にした4連の蒸発缶を通して、濃縮していきます。初めの1号缶ではイオン交換樹脂で濃縮した海水をボイラーで加熱して蒸発させます。2号缶で1号缶の半分の圧力、3号缶でさらに半分、4号缶でまた半分と圧力を下げていき、沸騰が促進され、どんどん濃縮されていきます。最後に遠心分離器にかけて脱水し、乾燥機にかけると塩の出来上がりです。

ちなみに富士山の山頂では大気圧の80%の圧力で水は沸騰しますが、ものが煮えません。沸騰はしても温度が低いことが原因です。これを逆利用したものですね。

91「真空技術で作られる塩は日本の英知の集結」
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