#191「真空環境で使われるベアリングは真空技術で作られていた」

真空にヒントあり

人工衛星は実に様々な部品によって作られています。もちろん、そんな部品が作られるのは地球上ですが、実際に使用されるのは宇宙空間。つまり、苛酷な真空環境です。かつて日本では人工衛星のトラブルが続いたことがありました。電源回路や機構部品などの故障が指摘され、一つ一つの部品に、厳しい環境下に耐えられる耐久性が求められたのです。

宇宙環境では衛星表面の温度は太陽に向いた面で150℃、日影になると−100℃と極端に違います。しかも、約100分の地球周回中にこの変化を経験することになるのです。そのため、部品にも同じような温度差、超高真空という環境下で作動テスト、耐久テストを行っています。

人工衛星に使用されるベアリングについて説明させてください。通常、地球上で使用するベアリングには油やグリースなどの潤滑剤を使用しています。しかし宇宙空間ではたえず宇宙線に照射され、油やグリースは蒸発してしまいます。そこで、宇宙空間で使われるベアリングには固体潤滑膜をコーティングしたベアリングを使用します。このコーティングに使用されるのが真空技術を活かした成膜技術。いわゆるスパッタリングやイオンプレーティングと言われる技術です。

固体潤滑材として使用されるのは、二硫化モリブデン、金、銀、鉛など。これらの柔らかい金属をコーティングすることで、摩擦低減が実現するのです。GPSや気象予報、テレビ中継など、人工衛星の恩恵にあずかるときには、真空技術の重要性をほんの少しだけ思い出してくださいね。

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