真空メディア誕生 第2回

真空メディア誕生

第2回『 水は70℃で沸騰する 』

境目研究家・安田佳生と、『水は70℃で沸騰する』編集長である佐藤真空株式会社・佐藤嘉紀による真空メディア誕生秘話。「なぜ、お堅い真空機器メーカーがウェブマガジンを発行することになったのか」これを読めば見えてくる!?
yasuda
安田

新しいブランドの軸になるものをつくろう、ということでしたよね。

sato

佐藤

はい、そうです。

yasuda

安田

じつは私、展示会にも一度お邪魔させていただきました。

sato

佐藤

ありがとうございました。

yasuda

安田

それで、言いにくいんですけど、ちょっとがっかりしたんですね。

sato

佐藤

イメージと違いましたか?

yasuda

安田

真空って、ロマンのある仕事というか、普通の人が知らない世界というか、そういうものをイメージしてました。

sato

佐藤

ロマン感じなかったですか?

yasuda

安田

ブースに機械が並んでるだけだった、というのもあるんですけど。

sato

佐藤

他にも何か?

yasuda

安田

やってらっしゃるご本人たちが、まったくロマンを感じてない。

sato

佐藤

そうですね。お客様の研究開発や生産における課題に対して、適切な機器をご提案するというのがメインですので、印象としてはロマンから遠いかもしれませんね。

yasuda

安田

でも真空の技術って、色んな分野で使われているんですよね?

sato

佐藤

食品の真空パックやフリーズドライ、メガネやカメラのレンズのコーティングに始まり、医薬品、化粧品、PC、スマホ、宇宙、ありとあらゆる分野で使われています。

yasuda

安田

中でも魚の醤油入れにも真空がからんでいるとは知りませんでした。ほんと多岐にわたっていて驚きます。

sato

佐藤

はい。

yasuda

安田

そのバラエティ豊かさに比べると、すごくもったいない気がしました。

sato

佐藤

ブースの出し方が下手ですか?

yasuda

安田

佐藤真空さんだけじゃなく、展示会で見た他社さんもみんなそうでしたけど、下手というより、なんか閉じている感じ。

sato

佐藤

食品から宇宙まで、多岐のにわたる産業を支えている重要な仕事で、そこに誇りをもってはいるんですが。

yasuda

安田

残念ながら、その広がりを感じませんでした。

sato

佐藤

「僕らの機械や技術が使われてる」という自覚はあるんですが、やはり一般消費者に直接馴染みがないことが大きいのでしょうか。

yasuda

安田

いまいち効果に実感が持てないということですか?

sato

佐藤

いや、つくっているものには自信があるんですよ。ただ実感として「自分たちが支えてる」というところまで落とし込めていない気がします。

yasuda

安田

製造の中の「ひとつのステップ」を担ってるだけというイメージですか?

sato

佐藤

そうですね。

yasuda

安田

それは勿体ないですよ。だって真空をつくってるわけでしょ?

sato

佐藤

つくってます!

yasuda

安田

それって、すごくロマンがあるじゃないですか。だって、地球上に「宇宙をつくってる」みたいなもんですよ。

sato

佐藤

そうですね。そこにもっていきたいです、イメージを。ただ機械をつくっているだけではない。

yasuda

安田

機械ではなく「真空をつくっている」という発想が大事ですよね。

sato

佐藤

そうですね。僕らの中で知らず知らずのうちに「縁の下の力持ちなんだ」っていう気持ちが芽生えているのかもしれない。

yasuda

安田

このウェブマガジンを通じて、そこを変えていきたいです。

sato

佐藤

はい。真空の面白さとか、可能性とかを、たくさんの人達にも知ってもらって、参加してもらいたい。

yasuda

安田

真空ポンプ屋さんではなく「真空を仕事にしている会社」っていうイメージを、広めていきたいですよね。

sato

佐藤

そうしていきたいです。

yasuda

安田

で、私が一番ピンときたのは「宇宙がニュートラルだ」って話なんですよ。

sato

佐藤

宇宙では真空が当たり前ですからね。

yasuda

安田

はい。「真空」は地球では異常な状態だけど、宇宙ではそっちが普通。つまり地球上が異常な状態。そこがなかなか新鮮でした。

sato

佐藤

それが新鮮であるというのが、僕らにとっての気づきです。

yasuda

安田

ちなみに社員さんは、真空について詳しいんですか?

sato

佐藤

もちろん詳しいです。

yasuda

安田

詳しいけど、だんだんと「ロマンを感じている暇」が、なくなって来るんですかね。

sato

佐藤

そうですね。日々の仕事ではなかなかロマンを感じきれていません。

yasuda

安田

じつは真空屋さんに限らず、ケーキ屋さんとかも同じなんですよ。

sato

佐藤

ケーキ屋さんですか?

yasuda

安田

はい。ケーキ屋さんって、ロマンチックな仕事に見えるじゃないですか。

sato

佐藤

見えますね。女の子の憧れの職業みたいな。

yasuda

安田

でも、ずっとやってると、流れ作業みたいになっていくんですよ。

sato

佐藤

何年もやっていると、そうなるでしょうね。

yasuda

安田

だからこそ「真空ポンプ」や「真空装置」という枠組みを、一旦外すことが大事だと思ってます。その役割にこのメディアがなればいいなと。

sato

佐藤

そうですね。自分も気づきたい。気づかせてもらいたい、っていう思いがあります。

 

yasuda

安田

で、常識を壊すというか、変えるというか、そういうメディアをつくろうという話になったわけですけど。

sato

佐藤

はい。いずれにせよ既存の枠に捉われないメディアにしたいですね。

yasuda

安田

ウェブマガジンの名前ですが『水は70℃で沸騰する』に決まりました。

sato

佐藤

みんなの頭の中の常識は絶対「水は100℃で沸騰する」。真空の世界では水が100℃以下で沸騰することは常識なんですけど、普通の人にとっては「常識外」なんだろうなと。

yasuda

安田

理論的には分かるんですけど、言われるまでは知りませんでした。

sato

佐藤

真空を語るうえで最もキャッチ―な性質で、タイトルを見て100℃ではないことへの違和感がパッと見て感じられる。気に入ってます。

yasuda

安田

マガジンの名前としてはちょっと変ですよね。マガジンっぽくないというか。

sato

佐藤

そこがまた「いいな」と思いました。常識を裏切るという意味で。

yasuda

安田

かなり冒険したネーミングですよね。ところで「エベレストの頂上では70℃で水が沸騰する」という事実を、社員さんはみんな知ってるんですか?

sato

佐藤

「エベレストの」となると微妙です。

yasuda

安田

真空屋さんで働いているのに?

sato

佐藤

そうですね。性質としては常に利用しますが、日々の仕事では触れない知識です。

yasuda

安田

そうなんですね。

sato

佐藤

でも先ほどの展示会の話もそうですが、これが真空と関わりがない人との関わりが少ない証拠かもしれません。

yasuda

安田

ここで、今回のプロジェクトで「関わる人を増やしたい」ってことにつながるんですね。

sato

佐藤

それをきっかけに現在の仕事についても見直す機会ができる。それがまた自信や活力に繋がればいいなと。

yasuda

安田

どういう気持ちでやるかによって、仕事の意味って変わってきますよね。

sato

佐藤

その通りですね。すごく楽しみです!

~ 第3回へ続く ~

メディア誕生ストーリー
第1回「 きっかけはキーホルダー? 」
第2回「水は70℃で沸騰する」※本記事
第3回「余計なものをかきだすメディア」2019/5/16公開
第4回「曲がって見える直球」2019/5/23公開

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