#1 「マッドサイエンティストが夢見ていた世界システム」ニコラ・テスラ

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第1話

ニコラ・テスラ(1856〜1943)
クロアチア生まれの発明家

1901年、ロングアイランドに建てられた57メートルの巨大な鉄塔を見て、周囲の人たちはきっと腰を抜かしたことでしょう。しかし、本当に驚くのはその鉄塔が建てられた目的を知ったときでした。「電波のように、電気をワイヤレスで世界中に送るシステムを作るための実験塔なのだ!」と意気揚々と語ったであろう人物はクロアチア生まれの発明家、ニコラ・テスラ。「20世紀を発明した男」として、名声を欲しいままにしていた発明家が言うのだから、と周囲の期待は目の前の鉄塔のように高くなる一方でした。

しかし、この大胆な夢への挑戦がテスラのケチの付き始め。何年経っても結果が出ず、出資者との関係も悪化。さらに第一次世界大戦が始まると、巨大なタワーは攻撃のわかりやすい標的にされたりして、やがて撤去されてしまうのです。

現代社会の電力システムの礎となっている交流電流による仕組みを考え、蛍光灯やリモートコントロール、熱伝導、無線操縦、太陽発電などを発明した世紀の天才・テスラは、以後、坂道を下るような人生を送り、1943年にはニューヨークのホテルの一室で孤独な死を迎えてしまいます。

晩年、マッドサイエンティストと揶揄されたステラ。痩せ衰えた身体で公園に出かけては、ハトと話すことを唯一の楽しみにしていたと言います。彼がハトに語りかけていたのは、過去の自分の栄光なのか、それとも、果たせなかった世界システムの夢なのか……。自分を信じてとてつもない発明をし、自分を信じて人生に翻弄された、そんな天才に今再び注目が集まり始めています。

タイトルとURLをコピーしました