#56 「弱者に希望をもたらした20世紀の英雄」ハーヴェイ・ミルク

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第56話

ハーヴェイ・ミルク(1930年〜1978年)
アメリカで初めて同性愛者であることを公表した公職者

ハーヴェイ・ミルクを語るには、その時代背景をしっかりと掴んでおく必要があります。彼がサンフランシスコの市会議員に当選したのは1977年。この時代はもしかしたら、ゲイを初めとするLGBTの人たちにとって最も困難な時代だったのかもしれません。なぜなら、世の中もその存在をしっかりと認知し、同時に、本人たちもそれを世間に認めて欲しいと願うようになっていたからです。だからこそ、この時代にゲイたちを忌み嫌う人たちとの軋轢がもっとも激しく突出してしまったのではないでしょうか。

ミルクもそんな時代の渦に巻き込まれた一人なのかもしれません。彼はサンフランシスコでもゲイコミュニティとして有名なカストロ地区を基盤にしていました。そして、アメリカで初めてゲイであることを公表して、市会議員に選出されたのです。同性愛者たちの期待は大きく、ミルクもそんな期待に応えて活躍しました。同性愛者権利法案を後援するなどして尽力しましたが、就任して1年もたたないうちに暗殺されてしまうのです。

同僚市議による暗殺は裁判によって「計画的ではない」と判断されましたが、ミルクは自らの身の危険を以前から感じていたようです。その証拠に彼が暗殺されたあと、1本のビデオが見つかりました。『暗殺によって死んだ場合にのみ再生すべし』と記録されたビデオメッセージには、「同性愛者だけではなく、有色人種や障がい者、老人などすべてのマイノリティたちは、希望がなくては生きてはいけない。だからこそ、彼らに希望を与えなければ!』と話すミルクが映し出されていたのです。

ハーヴェイ・ミルクが実現しようとしたのは、多様性をみんなが認められる世界だったのでしょう。自らがマイノリティとして生きたミルク。そんなミルクが願ったのは、マイノリティたちが笑顔で暮らせる世の中だったに違いありません。

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