#55 「住所不定の天才画家が世界を変えた」葛飾北斎

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第55話

葛飾北斎(1760年〜1849年)
世界中に影響を与えた浮世絵師

『富嶽三十六景』は、北斎が60歳を越えてからの作品群だと言われています。北斎は90歳という長寿を全うしましたが、亡くなるまでその創作意欲は衰えることはなかったようです。しかも、若い頃からずっと同じことを繰り返さないという特徴が北斎にはありました。これは天才と呼ばれる人たちの特長としてよく言われる「飽き性」な一面が北斎にもあったということなのかもしれません。

生涯に30回も画号(絵師としての名前)を変え、住まいも次々と転居していたそうです。記録によると生涯に引っ越した回数は93回。1日に3回引っ越したこともあったと言います。あまりにも転居が多いので、当時の人名録には住所不定ということになっていたというから驚きですね。しかも、北斎が頻繁に引っ越しをした理由は絵を描くことだけに集中していたからだそうです。つまり、毎日毎日、絵を描いて、部屋が荒れてくると引っ越しをしてしまう。このあたりも天才の天才たる所以なのかもしれません。

北斎も絵を描くということに対しては飽きるということはありませんでした。次々と作品を生み出し、一つの作風が完成してくると、さらに次の作風へと挑戦していく。だからこそ、90歳で亡くなる間際、「あと5年、天が命を保ってくれたら本物の描きになれるのに」と言ったそうです。

そんな貪欲な創作意欲の果てに生み出された作品群は後にヨーロッパの芸術家にも影響を与えていきます。元々は陶磁器を輸出する際に、浮世絵版画が包み紙として使われたという逸話がありますが、その独特の構図やタッチがヨーロッパの絵画や建築へと影響を与えたと言われているのです。名前を変え、住まいを変え、作風を変えながら、「絵を描く」ということを深めていった天才浮世絵師・葛飾北斎。2020年には北斎をテーマにした新しい映画も公開されるそうです。また新しい北斎ブームがやってくるかもしれませんね。

タイトルとURLをコピーしました