#79「至上の愛を実際のサウンドにしてみせた男」ジョン・コルトレーン

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第79話

ジョン・コルトレーン(1926年〜1967年)
モダンジャズのサックスプレーヤー

ジョン・コルトレーンはアメリカのモダンジャズを代表するサックスプレイヤー。しかし、下積み時代が長く、人々に知られるようにあったのは30歳を目前にしたあたりからでした。しかも、40歳という若さで亡くなってしまったので、彼が第一線で活躍したのはたった10年あまりということになります。では、彼が短期間に大きな足跡を残せたのはなぜでしょう。

それは、多くの偉人たち同様、自分自身の仕事に対して常軌を逸するほどに真摯であったという一言に尽きるのではないでしょうか。ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスに出会ってモード奏法を身につけ、天才ピアニスト、セロニアス・モンクに弟子入りして音楽の神髄を身につけたコルトレーンは、「神の恩恵を受けた」と公言し、実際に30歳あたりから演奏が格段に安定し、見違えるようなパフォーマンスを見せるようになったのです。

あっという間に成熟したコルトレーン。その演奏は連続して無数の音を敷き詰めたようなスタイルとなり、「シーツ・オブ・サウンド」と呼ばれるようになります。後進にも大きな影響を与え、快進撃を続けるコルトレーン。1966年に初来日した時の記者会見では「私は聖者になりたい」とコメントしています。この時、17日間12公演という強行スケジュールの中、コルトレーンは原爆被害にあった広島と長崎でも公演し、『Peace on Earth』という新曲を披露しました。

やがて、コルトレーンの音楽はさらに自由に大きくなり、1965年には名盤として大ヒットした『至上の愛』を発表。ワンフレーズ毎に人間愛がにじみ出すような温かな音は、広島、長崎で発表した『Peace on Earth』の流れを汲み、コルトレーンのジャズジャイアントとしての存在を不動のものにしたのです。

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