#133「過去を栄光に変え、笑いに変えようとした男」マイク・タイソン

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第133話

マイク・タイソン(1966年〜)
アメリカの元プロボクサー、元WBA・WBC・IBF世界ヘビー級統一王者

マイク・タイソンはかつて地球上で最強と言われたボクサーでした。18歳でプロデビューしてからわずか2年。20歳でタイソンは史上最年少のWBC世界ヘビー級王者となったあと、WBA、IBFのヘビー級タイトルを獲得して3団体の統一王者へと登りつめたのです。

しかし、タイソンの人生は順風満帆なものではありませんでした。わずか2歳の時に父は蒸発。母は自宅で売春斡旋業を営み、姉は親から無理矢理客を取らされていたようです。そんな苛酷な状況の中で育ったタイソンですが、もともと内向的な性格だったため、子どもの頃からいじめられることが多かったのです。

小学校1年のころから学校へ通わなくなったタイソン。彼は近所の不良グループの使い走りをさせられることになります。そんなある日、タイソンが大切にしていたペットの鳩が、近所の不良少年に殺されるという事件が起こりました。この時、いじめられっ子のタイソンは我を忘れてこの少年に殴りかかり、倒してしまったのです。人生で初めてのケンカでした。そして、人生で初めて自分は強いのだと気付いた瞬間でした。ここから、タイソンは強盗や麻薬の売人など犯罪に手を染めていくのです。

やがて、お決まりのコースのようにタイソンは何度も逮捕され少年院に収監されます。そして、この少年院でタイソンはボクシングと出会うのです。この出会いがタイソンの人生を大きく変えることになりました。「ケンカに強くなるため」にボクシングを始めたタイソンでしたが、次第にスポーツとしてのボクシングに目覚めていったのです。

ここから、前述のようにタイソンの快進撃が始まるのですが、その快進撃も20歳前後の統一王者になった頃で終わってしまいます。その後のタイソンは、試合でも精彩を欠くようになり、プライベートでもトラブルばかり起こすようになってしまいました。原因はタイソンを金に換えようとしたプロモーター、ドン・キングのせいだという人が多いですね。しかし、それ以上に過去のトラウマを抱え込んだタイソン自身の弱さに最大の原因があったことは確かです。

タイソンが、再び過去の栄光を手に入れることはありませんでした。しかし、それでも人生は続きます。酒やドラッグに溺れても、そこから立ち上がらなければなりません。栄光と挫折を経験し、人生の地獄を見たタイソンもすでに50代の半ば。現在、タイソンは大麻が合法化されたカリフォルニアで自身の大麻農園を経営しながら、スタンドアップコメディアンとしても活躍しています。自身の苛酷な過去を栄光に変え、さらにまた笑いに変えようとしているのでしょうか。どちらにしても、この元チャンピオンは自分自身を地獄へと引きずり下ろそうとする過去のトラウマと戦い続けているのかもしれません。

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