#186「誰もが愛した努力と我慢のホームラン王」王貞治

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝 第186話

王貞治(1948〜)
日本の元プロ野球選手・監督

868本という通算本塁打は世界記録としていまだに破られていません。そんな記録を打ち出したのは王貞治です。本塁打の数で語られることの多い王ですが、実は生涯打率3割、出塁率4割4分と本塁打以外も素晴らしい記録を残していることからも、バランスの取れた選手だったということがおわかりいただけると思います。

そこまでの記録を生み出し、選手を引退したあとは監督に就任。引退まで順風満帆な人生を送ってきた人というイメージがあるかもしれません。しかし、生まれたばかりの頃は、両親が「この子は生き延びることができないかもしれない」と出生届をしばらく出さなかったほどの虚弱な赤ん坊だったそうです。3歳までは立つこともおぼつかなく、4歳でやっと丈夫になれたといいます。しかし、その後は身体も大きくなり、なんと中学生で身長は175センチ。当時出会ったプロ野球選手の荒川博は、2年生だという王に「じゃあ早稲田大学で野球をやりなさい」と勧め「その前に高校に行かなくては」と返されて初めて、王が高校2年生ではなく中学2年生だったということに気付いたそうです。

それほど身体に恵まれた王ですが、彼のすごさは生まれ持った資質だけに甘えなかったところではないでしょうか。プロ野球選手になってからもチームの練習後には部屋で素振りを繰り返しました。当時のエピソードとして、「練習した部屋の畳がボロボロになっていた」「激しい練習で足から血しぶきがあがった」「腕を振りすぎて翌朝、顔を洗おうとしたら腕があがらなかった」などなど、すさまじいエピソードの枚挙に暇がありません。また、精神集中のために日本刀で素振りをしたこともあるそうです。

天才打者でありながら努力の人であった王貞治。彼はこう言いました。「努力は必ず報われる。もし、報われない努力があるならば、それはまだ努力とは呼べない」と。そんな耐え忍ぶような努力は監督になってからも続きます。就任直後、勝てないチームに鬱積したファンが選手団のバスに生卵を投げるという事件がありました。この時も王は「ただの生卵じゃないか。本当に悪意を持った奴らなら石を投げてくる。彼らには良心がある。生卵なら当たっても怪我はしないよ」と。

タイトルとURLをコピーしました