#212「愛と映画に生きた名女優」イングリッド・バーグマン

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝212話

イングリッド・バーグマン(1915〜1982)
スウェーデン出身の女優

映画『カサブランカ』で、ハンフリー・ボガートと見つめ合うシーンは、「君の瞳に乾杯!」という名セリフで語り継がれる名女優イングリッド・バーグマン。彼女は1915年、スウェーデンのストックホルムに生まれました。女優としてのキャリアは舞台から。17歳の時に、ストックホルムの劇場のオーディションを受けて合格します。その後、映画女優としても活躍するようになり、自身が主演した『間奏曲』の英語版リメイク『別離』に主演のためにハリウッドに招かれます。

『別離』は大ヒットし、バーグマンは人気女優となりました。1942年には前述の『カサブランカ』、1943年『誰が為に鐘は鳴る』、1944年『ガス燈』とヒットを重ね、アカデミー賞を3度も受賞しています。しかし、彼女はもっといい作品に出たい、もっと私を活かしてくれる人がいるはずだ、という気持ちを強く持っていたようです。それが、3度の結婚につながっていきます。

なかでも1950年にイタリアで撮影した『ストロンボリ』の監督、ロベルト・ロッセリーニとの不倫関係は多くの非難を浴びる結果となりました。しかし、バーグマンは夫と娘を捨て、ロッセリーニとの愛を選んだのです。1940年代には聖女と讃えられ人気を誇ったバーグマンは、1950年代には悪女と罵られるようになりました。それでも、バーグマンは自分自身の姿勢を崩すことは一度もありませんでした。

バーグマンがアメリカ映画に復帰したのは1957年の『追想』でした。この作品でバーグマンは2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞。授賞式に出席したバーグマンは、観客からスタンディング・オヴェーションで迎えられました。数年に及ぶバッシングが終わり、新たな女優としての道が拓けた瞬間でした。

『オリエント急行殺人事件』(1974年)ではアカデミー賞助演女優賞を受賞。『秋のソナタ』(1978年)ではスウェーデンのイングルマール・ベルイマンとタッグを組み、1982年にはテレビドラマ『ゴルダと呼ばれた女』の主役にも抜擢されました。しかし、その間に彼女は病に苦しみ、最後のテレビドラマ『ゴルダと呼ばれた女』の完成から4ヵ月後にこの世を去りました。自らの愛と誇りに翻弄されながらも、一途に歩いた人生でした。

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