#213「空を飛ぶ夢を見続けた男」堀越二郎

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝213話

堀越二郎(1903〜1982)
日本の航空技術者

アニメ映画『風立ちぬ』のモデルにもなった堀越二郎。彼は零戦を設計した航空技術者として知られています。優れた技術者として知られている堀越ですが、天才的な人物だけあって、ちょっと変わり者だった部分もあるようです。彼の場合は、几帳面が過ぎたのか、船に乗ると食堂のメニューをいちいち持ち帰って取っておいたそうです。他にも、部屋の中に布団を敷くときには布団と壁がきちんと並行にならないと気が収まらなかったり…。もちろん、領収証などは一枚一枚すべて保存していたそうです。

高い技術力が買われ、三菱内燃機製造に入社した堀越はここで頭角をあらわします。入社わずか5年で設計主任を任され、海軍から頼まれた新型戦闘機の設計を担当したのです。この時の設計は実際には採用されなかったものの、2年後には世界水準の戦闘機が実際に製造されました。

しかし、仕事でも堀越のこだわりは発揮され、部下からあがってくる設計図を何度も何度も突き返し、「ああ言えば、堀越」と呼ばれていたそうです。なぜ、設計図を突き返していたのか、それは堀越が「ただ飛べばいい」という設計を目指していなかったからです。

あの零戦の設計をする時にも、堀越はエンジンの種類が決まると、ボディ全体のイメージを描きあげたそうです。これは、一般的な航空機の設計とは手順が違います。堀越は、なによりも流れるような美しい機体を優先させたのです。もちろん、見た目だけではなく性能でも世界に類を見ないものを実現するため、堀越は設計にこだわり続けます。

そして、最後の最後、3000枚にも及ぶ設計図が出来上がると、堀越は最終調整に入りました。しかも、計算での確認ではなく、すべてを手作業で調整しました。そんな堀越の常軌を逸したこだわりが、後世に語り継がれる飛行機を完成させたのです。

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