#227「謎のアマチュア写真家は、謎の家政婦だった」ヴィヴィアン・マイヤー

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝227話

ヴィヴィアン・マイヤー(1926〜2009)
アメリカのベビーシッターであり写真家

2015年、日本で一本の映画が公開されました。タイトルは『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』。この映画はアマチュア写真家ヴィヴィアン・マイヤーの写真と人生を紹介するドキュメンタリー映画でした。それまで、マイヤーは誰にも知られておらず、写真のほとんどはプリントされたこともなかったのです。

では、ヴィヴィアン・マイヤーとはいったい何者なのでしょうか。実はマイヤーの過去はあまり知られていません。アメリカ・シカゴのノースショアでベビーシッターとして約40年間働きながら、その空いた時間に写真を撮影していたらしいのです。その数は生涯で15万点以上。ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスの人物と建物が被写体の中心でした。

マイヤーとその写真が知られるようになったのは、その写真がオークションに出され、コレクターがネット上で紹介してから。写真は大人気となり写真集はAmazonの写真集でランキング1位にもなりました。しかし、マイヤーの生涯は謎に包まれています。友だちもほとんど作らず、結婚もしていない。長くベビーシッターとして働いていても、わざとフランス語訛りの英語を話し、出身地や自分の家族については絶対に口にしなかったそうです。

20代でベビーシッターになったマイヤーですが、若い頃は子ども好きでとてもいいベビーシッターだったようです。子どもたちを自然豊かな公園に連れて行き、その行き帰りに写真を撮るという暮らしをしていました。しかし、年を取ってくると、段々行動が狂気じみてきます。子どもたちを怪しげな場所に連れて行ったり、近隣とトラブルを起こしたりして仕事を失います。収集癖のあったマイヤーは大量の写真と新聞などを倉庫に預けてしましたが、そ支払もできなくなり、彼女が亡くなる2年前にこれらの写真がオークションにかけられることになったのです。

コレクターがマイヤーという希有な写真家を発見した2年後、彼女は氷上で転倒し亡くなってしまいます。15万点以上の写真と、なぜ彼女が写真を撮っていたのかという謎を残して。

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