#228「日本のシェークスピアと言われる浄瑠璃作家」近松門左衛門

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝228話

近松門左衛門(1653〜1725)
浄瑠璃・歌舞伎作家

近松門左衛門は謎の多い人物です。主に人形浄瑠璃の脚本を書き続け、生涯に書いた本数は浄瑠璃では時代物が90作、世話物が24作と言われています。また、歌舞伎も数多く書き残していて、約40作が近松の作だと言われているそうです。

近松の代表作と言えば、『曽根崎心中』『冥途の飛脚』『国性爺合戦』『心中天網島』『女殺油地獄』などがあります。こうしてみると、代表作のほとんどが世話物です。世話物とは当時実際に起こった事件を題材にした作品で、『曽根崎心中』は実際にお初と徳兵衛が心中したその年に書かれています。そう考えると、近松は劇作家としての視点と、当時の世相を物語に昇華させるジャーナリズムの視点が同居していたのかもしれませんね。

そんな近松ですが、近年になって福井県鯖江の生まれだということが福井藩の記録によって分かりました。しかし、それまでは実にいろいろな場所が、近松の生まれ故郷だと言われていたのです。京都、近江(滋賀)、肥前唐津(佐賀)、越前(福井)、三河(愛知)、北越(新潟)、長州萩(山口)、雲州近松村(島根)などなどが、近松も生まれ故郷として手を上げていました。これも、近松の作品が評判となり、全国的な人気を誇っていたからに違いありません。

さて、謎が多いと言われている近松門左衛門ですが出身は武家でした。武士の子どもとして生まれ、町人として育ち、劇作家となった近松。しかし、それでも心は生涯武士であったようです。その証拠に、絵師となった息子に描かせた生涯最後の肖像画は、武士としての衣装を身に纏った姿でした。

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