#230「愛を科学で計ろうとしたマッド・サイエンティスト」ハリー・ハーロウ

非常識人列伝

世界を動かした非常識人列伝230話

ハリー・ハーロウ(1905〜1981)
アメリカの心理学者

アメリカのウィスコンシン大学の研究者であったハーロウは、実験を繰り返していました。その実験の目的は愛を科学的に実証すること。具体的には猿の親子を実験材料として、母性愛の存在を実証しようとしたのです。

当時、アメリカでは母乳を与えて子どもを育てることは推奨されていましたが、母子が肉体的に触れあうことは、感染症の要因になると考えられていました。そこで、母性愛が大切だということを示すために、ハーロウは猿の子育てに介入する実験を行ったのです。

まず、アカゲザルの子を母親から引き離しました。そして、人工的に作られた2種類の母親を与えたのです。一つは柔らかい布で出来たお乳の出ない「布の母」。もう一つは哺乳瓶を取り付けたお乳の出る「針金の母」。つまり、布の母は温かいけれどお乳が出ない母。針金の母は冷たいけれどお乳が出る母だったのです。

この実験は小猿にとって苛酷でした。食事だけが大切なら、針金の母に懐くはずでしたが、結局、小猿は授乳の時以外はずっと布の母にしがみついていました。つまり、食事だけではなく温かい接触が必要だということが実証されたというわけです。

さらにハーロウは、実験を一歩進めて、小猿を2匹、用意しました。そして、片方には布の母だけを、もう片方には針金の母だけを与えたのです。結果は悲惨なものでした。針金の母だけを与えられた小猿は、メンタルをやられて自傷行為に走ることになりました。

ハーロウの実験は、当時アメリカで流行していた子育ての先進的な謝った考えを修正する役割を果たしました。しかし、その実験は母性愛という愛を実証しようと言う割りには、愛の欠如した残酷なものだったのです。その後も、ハーロウはさらに過激な実験を繰り返して、多くの人々に非難され、果ては動物愛護運動が起きるきっかけにまでなってしまったのです。

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