世界を動かした非常識人列伝236話
ピーター・フォーク(1927〜−2011)
アメリカの俳優
「うちのカミさんがね」のセリフで人気を博した推理ドラマ『刑事コロンボ』。その主役を演じたのがピーター・フォークでした。ニューヨークに生まれ育った彼は10代の頃から演劇に親しみました。初めて舞台に出演したのは12歳。『ペンザンスの海賊』という演目でした。その後、大学へ行き政治学を学んだ後、大学院で行政学の修士号まで獲得します。かなりのインテリだったようですね。政府の予算局に勤務するようになったピーターですが、演劇への情熱を抑えることができず、1950年代に演劇の世界に復帰します。
その後、舞台や映画で活躍を続け、卓越した演技力と存在感で評価を高め、生涯でエミー賞主演男優賞を5回も受賞したのです。しかし、彼を世界的な名優へと押し上げたのはやはり代表作『刑事コロンボ』ではないでしょうか。『刑事コロンボ』はボサボサの髪型で、一見冴えない刑事が鋭い観察眼で最後には犯人を言い当てるというストーリーと、それを演じるピーターの味のある演技が人気となり、当時の天皇陛下までが見ていると公言するほどでした。
「うちのカミさんがね」と世間話で油断させ、「あ、それからもう一つ」と気のないふりをして決定的な一言を引き出してみせる。もしかしたら、そんなコロンボの人柄が、ピーター自身も気に入っていたのかもしれません。
ピーター・フォークは3歳の時に目の病気になり、生涯、右目に義眼をはめて過ごしました。そんな苦労をしたピーターですが、演劇の他、画家としても才能を発揮。日本でも何度か絵画の個展を開いていたほどです。若い頃は映画の制作者と演技をめぐって対立することも多かったというピーター。例えば、フランク・キャプラ監督の作品では「自分は役者だ、コメディアンみたいなことはしない」と主張。しかし、監督に「それでいい。シリアスにコミカルな演技をすればいいじゃないか」と諭されたことがあったそうです。そして、この一言がピーターの演技の幅を広げ、後年の名優を生み出したのだとも言われています。
真の作り手同士が響き合い、互いを高めていくということを実証した例なのかもしれませんね。