真空にヒントあり#20 「ガン治療の光明、真空を使った粒子線治療」

真空にヒントあり

2人に1人がガンになると言われている現在。ガンを根絶する治療法の確立が待たれます。そんな中、ガン治療の一つの方法として注目されているのが粒子線治療です。

これまでも、エックス線やガンマ線などの放射線治療は広く行われてきました。しかし、これらの治療はガン細胞だけではなく、正常な細胞にも大きなダメージを与えてしまいます。そこで注目されたのが1994年、放射線医学総合研究所に設置されたガン治療用重粒子線加速器が放出する重粒子線です。

少し難しいお話ですが、誰にも無視できないことなので、説明させてください。同じ放射線でもエックス線やガンマ線が人体表皮部に放射線が強く作用するのに対して、重粒子線は身体の深部に強く作用する性質があり、重粒子線の強度をがん細胞の位置にあわせて調節すれば、ガン細胞をピンポイントで攻撃できるのです。こうして正常な細胞に副作用を極力もたらさない治療が可能になりました。

この粒子線治療には真空技術が必要です。重粒子線は加速器から放出されるのですが、加速器から治療室までのラインが、すべて細い真空の管でできているのです。

イオン源で発生した重粒子を光の速さの70%〜80%になるまで加速してエネルギーを高め、これを真空の管を通して治療室へ導き、患者のガン細胞に照射されます。現在、まだまだ施設も少なく、コストもかかる治療法ですが、さらに普及することが望まれています。

第20話「ガン治療の光明、真空を使った粒子線治療」
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