#33 「温かな音色を奏でる真空管アンプ」

真空にヒントあり

みなさんは音楽を聴くとき、どんなふうに聴いていますか? 最近は、スマホにヘッドフォンというスタイルが主流でしょうか。または、車のなかで大音量で音楽を楽しむという人もいるかもしれません。

一昔前までは、自宅でステレオ装置でレコードなどを再生して聴くというスタイルが中心でした。特にオーディオマニアと呼ばれる人々は、様々なアンプやスピーカーを揃えて、自分好みの音を作り出すことに腐心していました。そんなオーディオマニアに今も大人気なのが真空管アンプ。

真空管は、フィラメントという高温発熱体を持っています。このフィラメントに電圧をかけ、熱電子を放出することで電流が発生し、音の信号を増幅したり整流したりして、音色を作り上げていくのです。管の中に空気分子があると、熱電子は自由に動くことができません。また、フィラメントが燃えつきてしまいます。そのため内部が真空になっていてその名の通り真空管と呼ばれているのです。

この真空管アンプは部品の構成上、どうしてもシステムが大型になってしまいます。住宅事情の変化やヘッドフォンで音楽を持ち歩くというライフスタイルの変化に対応すべく、オーディオの世界もどんどん技術革新がなされました。真空管アンプはトランジスタに置き換わり、現在ではほとんどがICに置き換わっています。デジタル化されたことで、システムは小型化され音楽そのものもデジタル配信などで便利にユーザーのもとに送り届けることができるようになりました。

しかし、デジタル全盛の現在でも、真空管アンプは根強い人気を誇っています。それはなぜでしょうか。実は、真空管アンプの柔らかな音色に魅せられるファンが多いのです。トランジスタもICも真空管と同じように信号を増幅します。理論上はICでも、実際の音をしっかりと再現しているはずなのです。ただ数字としては同じ働きをしているのに、なぜか真空管アンプで増幅された音は柔らかく聞こえます。

その理由は、強調される周波数の特性によるようです。ICで増幅される音よりも、真空管アンプで増幅される音の方が、自然界にもともと含まれている周波数をより多く含んでいるそうです。つまり、それだけ人の耳に柔らかく、本物に近い音を再生しています。

なんとなく、温かく光る真空管アンプのイメージで、「音が柔らかい」と思っている人も多いようですが、実はきちんと聴きわけられるほどに、音色が違うのです。今度、家電店のオーディオコーナーで真空管アンプのシステムが展示してあったら、ぜひ試聴してみてください。

第33話「温かな音色を奏でる真空管アンプ」
タイトルとURLをコピーしました