#203「真空なら古代遺跡も未来につながる!」

真空にヒントあり

イタリアのナポリにポンペイという都市がありました。西暦79年、この都市を火山の大噴火が襲います。火砕流によって、ポンペイはそのすべてが覆われ、都市そのものがこの世の中からなくなってしまったのです。ポンペイが再発見されるのは1000年以上も後になってから。いまのように情報を蓄積するようなシステムもない時代ですから、1000年以上も経ち、伝説となっていたポンペイが実際にどんな文明をもっていたのか、どんな建築様式だったのかは不明でした。

しかし、大規模な発掘が行われた結果、都市の形だけではなく、そこにあった絵画や建築、そして、溶岩に覆われて亡くなっていった人々の姿までもがまるでついこの前まで生きていたのかと思えるほどの生々しさで出土されたのです。その理由は火山灰や溶岩に都市が覆われ、いわば現代の空気と触れあわなかったことで腐敗などから守られていたと考えられます。日本の飛鳥古墳が出土されたときに、見事な発色の壁画をたたえていたのは、同じように内部が現代の私たちの暮らしと隔離されていたからに他なりません。

いまも古代の木簡などの木製品などが出土しますが、これらが文字も読める状態で見つかるのは粘土質の泥の中などから出土したとき。では、これをさらに長期間保存するにはどうすればいいのか。そこで登場するのが真空技術です。つまり、木製品を外の空気と触れあわないようにすればいいのです。そのため、樹脂で木製品をコーティングします。この時、木製品の内部にまで樹脂が浸透しないと、腐敗が進んでしまいます。木製品を真空状態に置き、そこに樹脂を加えることで木製品の内部にまで樹脂が浸透。きれいなコーティングができるというわけです。

古代遺跡がまるで真空パックのように保存され、また、新しい真空技術で未来に語り継がれることを考えると、私たちは長い歴史の中に生きているんだなあ、と改めて思いますね。

タイトルとURLをコピーしました