#219「万年筆が再び注目を集めているって知ってますか」

真空にヒントあり

あっと言う間にデジタル全盛の世の中になりました。通勤電車のなかで新聞を広げている人はほとんど見なくなり、紙の本を読んでいる人も時々見かける程度。こういう状況になるとよく聞くのが「紙の書物じゃないと読んだ気がしない」「活字に線を引きながら覚えないと覚えられない」なんていう声ですね。でも、SDGsの世の中でそれはワガママなのかもしれません。そして、デジタルツールを開発する人たちも、しっかりとタッチペンで手書きの書き込みが出来たり、紙の本を読むよりも便利な機能を搭載して、人に優しいデジタル技術を実現しようとしてくれているのです。もちろん、そんなデジタルツールの開発や生産にもあちらこちらに真空技術が駆使されています。

でも、今日はデジタルじゃなくてアナログのほうにも真空技術が活きていますよ、というお話し。実はデジタル文具が全盛の世の中で、万年筆を購入する若い人たちが増えているのです。LINEやメッセンジャーじゃなくてちゃんと手紙を書いて送りたい、一日の終わりに日記を書きたい、という若い人たちの間で、万年筆が売れています。インクの滲み、かすれがデジタルにはない人間味を感じさせるからかもしれませんね。

さて、万年筆のどこに真空が使われているのか。それはインクをいれるときの仕組みにあります。万年筆のインク補充は大きくわけて、カートリッジ式と吸入式にわかれます。カートリッジ式はインクが入ったカートリッジを差し込むだけ。簡単で早くインクの補充ができますが、ちょっぴりコストがかかるのが玉に瑕ですね。その点、吸入式は主軸のなかにインクを入れて使います。万年筆のペンは軸尻部を回転させることにより内部のピストンが上下に動く構造になっています。軸尻を右に回すとピストンがペン先の方に動き、左に回すと軸尻の方に動きます。ピストン部が軸尻に動くと内部の空間が広がることにより圧力が下がり真空状態になります。この時にペン先からインクが吸い上げられるのです。

あ、せっかく真空でインクを吸入する万年筆ですが、以前もお伝えしたとおり、飛行機に乗ると気圧の変化でインクが飛び出すことがあるので、飛行機に乗る際にはインクは空の状態にしておいてくださいね。

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