#222「立派な本の背表紙によく似合う金の文字」

真空にヒントあり

本はかつて知恵を付けるための唯一の手段であり、知を象徴する存在でした。だからこそ、世界の国々の権力者は自国の国民のために無料で本を読むことができる図書館を作り、本を読むことを推奨したのです。そして、第二次大戦後、少しずつ暮らしが豊かになると、空前の百科事典ブームが巻き起こります。テレビドラマや映画でもセールスマンと言えば、百科事典のセールスマンが登場し、それを書斎に並べることは豊かさの象徴でもありました。

そんな本の中でも高級な工芸品のような本が存在します。著名な小説家の全集でもときおり見かけますが、立派な表紙に金色の文字が配された本は、見ているだけでもため息が出るほどです。さて、金の文字を配するやり方には大きく二つの方法があるようです。一つは金色のインクを使うというやり方。もう一つは金色の箔押しをする方法です。

この箔を作るのに真空技術が活かされています。ベースフィルム上に金色を表現する着色層、そのうえにアルミニウムの膜を真空蒸着した層、さらに接着剤の層を作ります。これを紙に箔押しをすると、接着剤によってアルミ膜と着色層が転写されます。そして、フィルムを剥離すると表面は金色に見えるというわけです。

この真空技術を使った加工は書籍だけではなく様々な分野に利用されています。もちろん、実際に金箔を使うという豪華な仕様の書籍や工芸品もありますので、金色の文字を見かけたらじっくりと観察してみてください。

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