#149「栄養とおいしさを両立させるのも真空の仕事」

真空にヒントあり

もうすぐ春がやってきます。おいしい食材もたくさん食卓を飾り、みんなを笑顔にしてくれることでしょう。食事はただ栄養があればいいというものではありません。彩りや盛りつけなどの見た目がとても大切です。きれいに盛り付けられた料理を眺めて、充分に期待を高めてから食べる料理は一段とおいしくなりますね。

しかし、高齢になると咀嚼するための機能が衰えてしまい、食品が硬いままだとうまく食事ができないことがあります。そんな時に重宝されているのがミキサーです。料理をミキサーにかけることで、噛まなくても栄養を獲れるようにします。しかし、この方法だとせっかくの料理がみんな流動食のようなペースト状になってしまいます。これでは、せっかくのおいしさも半減してしまいますね。

そんな中、2002年に広島県が開発したのが凍結含浸法による調理です。料理の見た目はそのままに、驚くほど柔らかい料理を提供することに成功しました。まず、食材を加熱してアクをとります。次に食材を凍結して、食材の中に氷の結晶を作った後に解凍。食材の中の水分が一度氷結晶になり、それを取り除くことで食材を形成している組織の間が押し広げられ、含浸液が染み込む隙間が生まれます。次に、真空容器の中に食材と軟化酵素液を入れて真空にすることで、食材から空気が排出され軟化酵素液が染みこんでいきます。

この方法の最大の魅力は、見た目が元々の料理のままだということ。ステーキでも、たけのこの煮物でも、見た目はもとの料理と変わりません。しかし、それを口に入れるとあっという間にとろけるように食べることができるのです。さらに素晴らしいのは、食べる人の噛む力に合わせて、柔らかさを調整出来るということ。それがあるからこそ、幅広い層に活用することができ、口から食べる喜び、自分で噛む喜びを提供することができるのです。まさに「食のバリアフリー」を実現した画期的な真空の利用方法ですね。

149「栄養とおいしさを両立させるのも真空の仕事」
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